男女の健康

病気のサインが男女で違う? 女性の体を守る「性差医学」って何?


毎年2月に、「Go Red for Women(ゴー・レッド・フォー・ウーマン)」というキャンペーンが行われています。これは、女性の心臓病を予防するための啓発活動です。

でも、なぜ「女性」に絞っているのでしょうか?
実は、同じ心臓病でも、男性と女性では「症状の出方」が大きく違うことがわかっているからです。

今回は、男女の違いに注目して病気を考える「性差医学(せいさいがく)」について紹介します。

知っておきたい要点

  • 女性の心臓病は、「胸の痛み」ではなく「胃腸の不調」や「あごの痛み」として出ることがある。
  • 男女の体の違いから病気の予防や治療を考える「性差医学」が注目されている。
  • 病気の種類によって、男性がかかりやすいもの、女性がかかりやすいものがある。
  • 女性ホルモンが減る「閉経後」は、心臓の病気などのリスクが高まるため注意が必要。

心臓病のサインは、男女で違う?

心臓病の症状と聞くと、「胸がギューッと苦しくなる」「胸が強く痛む」といった様子を想像するかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限らないのです。

心臓の血管が狭くなる「狭心症(きょうしんしょう)」になったとき、女性の場合は、一見すると心臓とは関係なさそうな症状が出ることがあります。
とくに閉経後(生理がなくなった後)の女性に多いタイプの狭心症では、胃腸の不調や、あご・肩甲骨(背中の骨)の痛みなど、さまざまな症状が出ることがわかっています。そのため、症状だけで判断すると「ただの胃もたれかな?」と見逃されやすく、治療が遅れてしまう危険があるのです。

こうした女性特有の症状を見逃さないために、アメリカ心臓協会(AHA)は「Go Red for Women」という活動を始めました。日本でも2023年からこの活動がスタートしています。
このように、男性と女性それぞれに合った予防や治療を考える「性差医学」という分野が、今とても大切にされています。

「性差医学」ってどんな学問?

男女の体の違いを医学的に研究する分野を「性差(せいさ)医学」といいます。
男女の体の違いが、病気へのなりやすさや、進行のスピード、薬の効き目にどう影響するかを明らかにする学問です。

実は、これまでの医学の研究は「男性」を中心に行われてきました。女性は妊娠や生理があることや、ホルモンの変化によって研究が複雑になってしまうため、「男性の体が標準」と考えられることが多かったのです。
そのため、女性特有の症状やリスクが見落とされがちでした。性差医学が発展することで、男女ともに、より正確な予防や治療ができるようになります。

かかりやすい病気は、男女でこんなに違う

男女で違いが見られるのは、心臓病だけではありません。さまざまな病気で、どちらがかかりやすいか(発症率)に違いがあることがわかっています。

病気の名前

男女の違い(特徴)

心臓や血管の病気
(循環器疾患)

・心筋梗塞などは、男性が全体の7〜8割を占める。
・細い血管が狭くなるタイプの狭心症は、患者の約3分の2が更年期の女性

甲状腺の病気
(のど仏の下にある臓器の病気)

女性が男性の5〜8倍多く発症する。

骨粗鬆症
(骨がスカスカになる病気)

背骨の骨粗鬆症は、女性が約10倍多い。

糖尿病

・子どもの頃に発症しやすいタイプ(1型)は、女性が約6割を占める。
・大人になってからの生活習慣が関わるタイプ(2型)は、男性に多い。

片頭痛

女性が約4.4倍多い。とくに30代の女性に多く見られる。

心の病気
(うつ病・不安障害など)

うつ病も不安障害も、女性のほうが発症しやすい。

認知症

病院に通う人も入院する人も、女性のほうが多い。

こうした違いを知っておくことは、自分に合った予防や治療を考えるうえでとても大切です。

なぜ男女で違いが生まれるの?

病気のかかりやすさや症状に違いが出る理由は、「生まれつきの体のつくり(生物学的な理由)」と、「生活環境の違い(社会的な理由)」の2つが組み合わさっているからだと考えられています。

体のつくりで言えば、ホルモンの違いが大きく影響します。たとえば、女性ホルモン(エストロゲン)には血管を守る働きがありますが、閉経してこのホルモンが減ると、脂質の処理がうまくいかなくなったり、血糖値を下げる働きが鈍くなったりします。これが、閉経後の女性に心臓や血管の病気が増える原因のひとつです。

一方で、生活環境も重要です。タバコを吸ったりお酒を飲んだりする習慣は男女で差がありますし、職業によるストレスや環境の違いも、病気のリスクに関わってきます。

まとめ

男女でかかりやすさに違いがある病気は、思いのほかたくさんあったのではないでしょうか。
男女それぞれに合った予防と治療を行うために、まずはタバコやお酒、食事などの生活習慣から気をつけてみましょう。

「Go Red for Women」のキャンペーンをきっかけに、ぜひ「性差医学」の考え方を知って、自分自身の体を守るヒントにしてくださいね。

参考文献

  1. 佐藤加代子. 循環器疾患における性差, 東京女子医科大学雑誌, 89巻4号, 2019年, 73-82頁
  2. Go Red for Women Japan|日本循環器協会
  3. 性差医学・医療について, 連合総研「女性労働者の職場における健康課題」, 2025年
  4. TK Sundari Ravindran, et al. Making pharmaceutical research and regulation work for women, BMJ, 371, 2020, m3808
  5. Yuncong Shi, et al. Sex difference in human diseases: mechanistic insights and clinical implications, Signal Transduction and Targeted Therapy, 9, 2024, 238

【文責】Pep Up ラボ編集部

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