病気を知る

「最近、同じ話が増えた?」と思ったら。認知症の一歩手前「MCI」のサインと対策


「最近、母が同じ話を何度もするようになった」「仕事のミスが増えた」
このような場面に心当たりはありませんか。それは、もしかするとMCI(軽度認知障害)のサインかもしれません。

MCIは、健常な状態と認知症の中間にあたる段階です。早めに気づき、適切に対応すれば、進行を遅らせたり、元の状態に回復したりする可能性があります。
この記事では、MCIの基礎知識や症状、対応方法について解説します。

知っておきたい要点

  • MCI(軽度認知障害)は、認知症の一歩手前の段階のこと。
  • 適切なケアを行えば、1年で16~41%の人が元の状態へ回復する可能性がある。
  • 65歳以上の3人に1人は、認知症またはMCIであるといわれている。
  • 「もの忘れ」や「段取りの悪さ」を感じたら、地域包括支援センターやかかりつけ医へ相談を。

MCI(軽度認知障害)とは

MCI(軽度認知障害)とは、認知症の前段階という立ち位置です。もの忘れが増えたり、集中力が続かなくなったりするなどの症状がみられます。
認知症との違いは、日常生活には大きな支障が出てないという点です。例えば、予定を忘れることが増えてもメモを取れば対応できたり、時間がかかっても家事をこなせたりするなど、ほかの人の介助がなくても生活する力は保たれています。

MCIに関して、具体的には令和4年(2022年)時点の推計値において、65歳以上の高齢者(約3600万人)のうち、認知症の人の割合は約12%、MCIの人の割合は約16%とされ、両方を合わせると、3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになります。

MCIと診断された方のうち、認知症へ移行する割合は1年で5~15%とされています。一方で、適切なケアや生活習慣の改善によって、1年で16~41%の方が元の状態に回復するともいわれています。

MCIの主な原因

MCIの背景には、さまざまな原因があります。そのなかでも最も多いのがアルツハイマー病で、MCIの原因のおよそ半数を占めています。
アルツハイマー病は、認知症の原因の約7割を占めている疾患です。MCIの原因がアルツハイマー病である場合、将来的に認知症を発症する可能性が高くなると考えられています。

そのほかにも、以下のような原因でMCIを発症することがあります。

  • レビー小体病やパーキンソン病などの、認知症を引き起こす疾患
  • 脳出血や脳梗塞などの脳血管障害
  • 正常圧水頭症
  • 脳腫瘍
  • うつ病
  • ビタミンB欠乏症や甲状腺ホルモンの低下など栄養・代謝の問題
  • 遺伝的要因(家族歴)

MCIの症状

MCIを発症すると、具体的にはどのような症状が現れるのでしょうか。
以下は、よく見られる症状をまとめた表です。日常のちょっとした変化が、実は大切なサインかもしれません。

症状

具体例

もの忘れが増えたと感じる

  • 人の名前や予定がすぐに出てこない
  • 体験したことは覚えているのに、細かい内容を思い出せない

家事や仕事でミスが増えた

  • 料理や買い物、会計などでミスが増える
  • 注意が続かず、作業中に間違いが多くなる

ものごとを段取りよく進められなくなった

  • 作り慣れている料理の順番がわからない
  • 家事の効率が悪くなる

言葉が出にくい・理解しづらい

  • 言いたい言葉がすぐに出てこない
  • 会話の内容が理解しづらい
  • 読み書きに時間がかかる

空間感覚が変わった

  • 図形をまねして書くのが苦手になる
  • よく知っている道で迷うことがある
  • 車のバック駐車など、距離感をつかむのが苦手になる

「気になる症状が以前より増えてきた」と感じた場合は、早めに対応しましょう。

気になる症状がある場合の対応

気になる症状がある場合、医療機関の受診を検討しましょう。いきなり受診するのに抵抗がある場合は、地域の窓口に相談する方法もあります。

医療機関を受診する

医療機関を受診する場合は、次のようなところで診てもらえます。

  • かかりつけ医
  • もの忘れ外来が設置されている医療機関
  • 認知症疾患医療センター

認知症疾患医療センターは、各都道府県や政令指定都市に設置されており、全国に500カ所以上ある機関です。認知症に関する診断や医療相談などを行っています。
医療機関を受診する際は、スムーズに伝えられるよう、症状や医師に聞きたいことを簡単にメモしておきましょう。
MCIと診断されたら、必要に応じて薬物治療が行われたり、生活習慣の改善についての指導が行われます。

地域包括支援センターに相談する

「家族がMCIかもしれないけれど、本人が受診を拒否している」「いきなり病院を受診するのは抵抗がある」
このような場合には、地域包括支援センターでの相談も可能です。

地域包括支援センターは、担当地域に住んでいる65歳以上の方なら、誰でも利用できる機関です。
ケアマネジャーや保健師、社会福祉士が在籍しており、必要に応じて認知症疾患医療センターと連携しながら支援してくれます。

まとめ

MCIは、認知症の前段階にあたる状態ですが、早期に気づいて適切な対応をすれば、症状の進行予防や、元の状態への回復が期待できます。
「気になる症状があるけれど、まだ病院に行くほどではないかな」と感じている方も、まずは記録をとり、地域の窓口へ相談することから始めてみましょう。

参考出典

  1. 国立長寿健康センター あたまとからだを元気にするMCIハンドブック
  2. 政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
  3. 日本神経学会 認知症診療ガイドライン2017
  4. 東京都長寿健康医療センター MCI(軽度認知障害)
  5. 池田将樹.“パーキンソン病の認知機能障害”.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.2019,vol.56,no.3,p.199-203.
  6. 新潟大学脳研究所 環境的要因と遺伝的要因からみる認知症

【文責】Pep Up ラボ編集部

Pep Up ラボは、JMDCが運営する健康情報メディアです。
レセプト・健診データなどヘルスケア領域のデータ事業で培った知見をもとに、日々のくらしに役立つ健康・予防・医療の情報を、医師を含む社内外の医療専門職の監修のもとでお届けしています。

JMDC コーポレートサイト:https://www.jmdc.co.jp/

※本記事は一般的な健康情報を提供しています。治療・相談は医療機関にご相談ください。

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