2024年から接種開始!鼻に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト」とは?

2024年10月から、日本でも鼻に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)」が使用可能になりました。
従来の注射型インフルエンザワクチン(インフルエンザHAワクチン)と何が違うのか?誰でも接種できるのか?などよくわからないという方も多いと思います。
接種を検討するにあたっては、それぞれの違いをしっかり理解しておくことが重要です。
この記事では経鼻弱毒生インフルエンザワクチンと従来の注射型インフルエンザワクチンの違いについて呼吸器内科の医師が解説します。

お話をしてくれる人
呼吸器内科専門医 チラ先生
それぞれのワクチンの違い
ワクチンの種類
まず、両者のワクチンの種類には大きな違いがあります。
インフルエンザHAワクチン | 不活化ワクチンです。これは、病原体となるウイルスを化学処理して感染能力を失わせた(不活化した)ものを原材料として作られます。体内でウイルスが増殖せず、安全性が高いとされています。 |
|---|---|
フルミスト | 生ワクチンです。生きたウイルスを弱毒化して使用するため、体内で一時的にウイルスが増殖することがありますが、それにより自然免疫反応がより強く誘導されます。フルミストは3価ワクチン(3つのウイルス株に対応)です。 |
対象年齢
ワクチンの対象年齢にも違いがあります。
インフルエンザHAワクチンは生後6ヶ月以上のすべての年齢層が対象です。特に日本では、生後6ヶ月から13歳未満の子どもは年2回接種が推奨されています。
なお13歳以上以降は、年1回の接種です。
一方、フルミストは日本では2歳から18歳までが対象です。
海外では49歳まで接種できる国もありますが、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では18歳までの小児や若者の接種を推奨としていることもあり、現時点で日本では成人(19歳以上)は接種対象外です。
接種回数は年1回です。
それぞれの特徴
ワクチンの種類や対象年齢などの違いをまとめると、以下のようになります。
インフルエンザHAワクチンの特徴
- 不活化ワクチンであるため、免疫不全の方や妊娠中の方も接種可能です。
- 19歳以上の成人は現時点でフルミストが対象外のため、こちらを使用します。
- やや免疫が付きにくいという点も指摘されています。不活化ワクチンは体内でウイルスが増えず、自然な免疫応答が弱くなりやすいとされています。
フルミストの特徴
- 鼻に噴霧するワクチンで、注射が苦手な子どもや若者に適しています。
- IgG抗体に加えて、気道のIgA抗体も誘導するため、特に小児における予防効果が高い傾向があります。
- 異なる株のインフルエンザに対しても、発症を軽症化させる効果が期待されます。
- 生ワクチンであるため、免疫不全の方や妊娠中の方は接種できません。
- 接種後1〜2週間の間にワクチンウイルスが排出される可能性があり、重度の免疫不全(※)がある方とは接触を避けることが望ましいです。
- 鼻づまりがひどいとフルミストの効果が低下する可能性があります。
(※)「重度の免疫不全のある方」について、具体的には以下のような方が該当します。
- 先天的や後天的な原因により、免疫機能に異常をもたらす疾患のある方
- リウマチなどの膠原病の基礎疾患があって免疫抑制をきたす治療を受けている方
- 抗がん剤を使用している患者の方
接種が不適当とされる方
また、それぞれの特徴から以下の条件に該当する場合には、ワクチンの接種を受けることが不適当であるとされます。
インフルエンザHAワクチン
- 明らかに発熱している方や重篤な急性疾患にかかっている方
- 鶏卵やワクチン成分に対するアナフィラキシーを経験したことがある方
フルミスト
- 明らかに発熱している方や重篤な急性疾患にかかっている方
- 鶏卵やワクチン成分に対するアナフィラキシーを経験したことがある方
- 妊娠中の方
- 免疫機能に異常があるの方、もしくは免疫抑制をきたす治療を受けている方
- 周囲に重度の免疫不全の方がいる場合(添付文書上は接種不適当には該当していませんが、水平伝播の可能性があることから接種後1-2週間は接触を避けるよう、添付文書上の記載されています)
- 重度の喘息やその症状がある方(添付文書上は接種不適当に該当はしませんが、接種には注意が必要となります)
インフルエンザHAワクチンと、フルミストのどちらも、鶏卵などに対しアレルギーがある場合でもアナフィラキシーを起こしたことがなければ、慎重に接種することは可能とされています。
また、フルミストについては、鼻づまりがひどい場合には効果が低下する可能性があるので、接種前に医師に相談しましょう。
接種にあたり日本小児科学会からの提言
フルミストの接種開始にあたり、日本小児科学会から2024年9月に以下のような提言が出ています。
- インフルエンザ HA ワクチンとフルミストの間で、インフルエンザ罹患の予防効果に対する明確な優位性は確認されていない。
- 喘息患者には不活化インフルエンザ HA ワクチンの使用を推奨する。
- フルミストは飛沫又は接触によるワクチンウイルスの水平伝播の可能性があり、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合は不活化インフルエンザ HAワクチンの使用を推奨する。
- 生後 6 か月〜2 歳未満、19 歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ミトコンドリア脳筋症患者、ゼラチンアレルギーを有する患者、中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者に対しては不活化インフルエンザHA ワクチンのみを推奨する。
これは、インフルエンザHAワクチンとフルミストの2つのワクチンの効果を直接比較した試験は実施されていないため、どちらが明確に優れているかという有意性はまだ示されておらず、フルミストの接種不適当に該当する場合はインフルエンザHAワクチンを推奨するということを提言したものです。
まとめ
従来の注射型ワクチンとフルミスト、それぞれに特徴や利点があります。
どちらが自分や家族に適しているかは、かかりつけ医に相談しながら、健康状態や年齢を考慮して選ぶことが重要です。
インフルエンザから身を守るため、適切なワクチンを選んで予防対策をしっかり行いましょう。
参考出典
- 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方(2024年9月2日)|日本小児科学会
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240909_keibi_i_vaccine.pdf - Tetsuo Nakayama, et al. The efficacy and safety of a quadrivalent live attenuated influenza nasal vaccine in Japanese children: A phase 3, randomized, placebo-controlled study. J Infect Chemother. 2024
- 小児に対するインフルエンザワクチンについて|厚生労働省(第 25 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001256393.pdf





